ユーザーエクスペリエンス デザインの本を超えて

先月末の丸善出版の編集会議で、私の企画の「インタフェースデザインの教科書」(仮)が通り来年の春に刊行の予定になりました。2008年に上梓した「魅力的なインタフェースをデザインする」のバージョンアップ版です。当時、ユーザビリティ評価の本は沢山書店に積まれていましたが、企業のインタフェースデザイナーやその設計者向けの設計論というべき本は皆無でした。そのため、大学の教員になったので、是非書きたいと思い執筆しました。また、大学の講義用の教科書としても必要を迫られたからという理由もあります。
しかし、その出版と同時に、アップルのiPhoneが発売になり、インタフェースデザインの環境が劇的に変化してきました。2014年には、17年ぶりにHTML5のリリースのWeb Applicationの時代を迎え、その本を叩き台にきちんとした設計論の本を執筆したくなりました。また、その本の出版社である工業調査会が二年前に倒産して、絶版になったことも後押ししました。工業調査会の元担当編集者の向井さんのご尽力で企画が実現しました。
その企画の際に、最近話題のユーザーエクスペリエンス(UX)関係の本と、どう違うかの指摘も受けました。勿論、UXデザインの本は増えてきているので、今更、その本を丸善出版が刊行することは後追いと思いました。しかし、少しきちんとUXデザインの本を調べてみようと思い、今年の1月に刊行された下記の『UXデザイン入門』を購入しました。本の内容は、下記のサイトからも分かるように、実践的な立派なものですが、かつてのユーザビリティ評価の本の拡張版ではないかと感じました。大半はその内容で、筆者からお叱りを受けるかもしれませんが、UXデザインの視点から整理しなおしたというものです。
新しい内容は、話題の「エスノグラフィ」や「ペルソナ」という手法が導入されているところでしょう。先月から米国のパロアルト研究所の日本人スタッフとして採用された知人の佐々君(調査会社の元イード勤務)によると、民俗学的な視点からの観察法とのコトでした。私たちデザイナーが学生時代に体験したデザインサーベィのハイカラな用語と思いました。この本の冒頭で少し興味を引いたのが、海外では、iPhoneなどに採用されているタッチインタフェースはNUI(Natural User Interface)と呼ぶとのことでした。また、認知的なインタフェースではアフォーダンスが希薄になることと述べています、同感です。
iPhoneの話題になったので、個人的なことですが、10年前の企業時代に携帯電話に搭載した誘導型のインタフェースデザインの特許がiPhoneに採用されたので、会社の知財部門から報奨金を頂きました。とても基本的な私たちのアイデアですので、携帯端末ではほとんど採用されるものです。アンドロイドなどでも使用していますので、少し期待します。
ところで、「ペルソナ」の話になりましたが、、知人らが「エクスペリエンス・ビジョン」という本を丸善出版から来月に刊行するとの案内が来ました。7月20日(金)18:00-、東京ミッドタウン・デザインハブ(六本木)で出版記念フォーラムを開催するとの案内です。私は20冊ほど上梓していますが出版記念などほとんどしていません。きっと本の営業活動の一環ですので、近くの皆さんは参加してみてください。「ペルソナ」が中心的な手法として用いられています。

筆者の栗山氏の『UXデザイン入門』刊行に寄せて
http://www.mitsue.co.jp/column/backnum/20120210.html
「エクスペリエンス・ビジョン」の案内
http://www.ergo-design.org/