デザインがイノベーションを起こす?

先日、広島での研究会で、一橋大学の延岡教授と名刺交換をした。彼は顧客価値がイノベーションを起こす論じている。一般的には、イノベーションは技術革新から生まれると考えられているが、近年では、任天堂Wiiの成功から、文化的価値からもイノベーションが生まれると認識されつつある。そこで、米国IDEOのスタンフォード大学でのdShoolのデザイン思考が注目されたといえよう。
同じことを、ロベルト・ベルガンティが著書「デザイン・ドリブン・イノベーション」(2012年出版であるが、残念ながら絶版)でも述べている。その一部をサイトから下記に引用する。意味を論じているので、かなり、デザインに近い考え方である。なお、下記の2番目のサイトにある、類似の「ーザー・ドリブン・イノベーション」(利用者が主導する革新)の説明も参考になる。

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製品やサービスのイノベーション(革新)は、「技術」と「意味(製品を使う理由)」の両方の変化から生まれる。本書の主題「デザイン・ドリブン・イノベーション」は、とりわけ製品が持つ「意味」を急進的に変化させて、市場で優位に立つ経営手法である。
注意したいのは、需要に応える「ユーザー中心型(またはマーケット・プル型)」のイノベーションと本書の手法は異なることだ。本手法では人々に製品の新しい使い方を提案するプッシュ型であり、これが受け入れられると長期的な競争優位を獲得できる。

製品技術(または機能)の進歩が、新しい意味を生成する契機にもなる。本書は「技術」「意味」の二つの軸で、イノベーションを分類している。

本手法が成功事例として挙げるのが、米アップルの携帯型音楽プレーヤー「iPod」や、任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」、スイスの時計ブランド「swatch」などである。例えばiPodは、デジタル音声圧縮技術の発展から「個人が自ら聴く音楽をプロデュースする」という製品の新しい意味を作った。カセットプレーヤーなどを代替しようとした他社製品との違いだ。

新しい意味を生み出すプロセスも解説している。鍵を握るのは、社外に多くいる「意味の解釈者(interpreter)」である。新しい価値感を打ち出そうと活動している芸術家や建築家、社会を洞察する研究者や教育家、社外のデザイナーや技術者らと、非公式に議論や研究を深める「デザイン・ディスコース」と呼ぶ人的ネットワークを作る。これをイノベーションを生み出す活動に組み入れるのだ。
本手法は、デザイナーのほか技術者にとっても示唆に富む。技術者に求められるのは技術の改善ではなく、技術の進化がもたらす意味の変化である。例えば発想や議論を活発にする「フューチャーセンター」などの施設を活用してデザイン・ディスコースと対話し、成果を市場への提案としてまとめていく。こうしたイノベーション活動のヒントを得るには絶好の一冊だ。

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引用
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120926/425311/?rt=nocnt

    • 上図は下記のサイトから引用

http://www.axisjiku.com/jp/2015/05/17/%E7%AC%AC13%E5%9B%9E%E3%80%8C%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%96%E3%83%B3%E3%81%8B%E3%82%89%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%96/