読書のすすめ

明けましておめでとうございます。このブログを始めて、一年半近くなります。ブログの読者も少しずつ増えてきています。主な読者は学生たちですので、年初の話題としては読書についてお話します。
大学の教員となって、まず、心配になったのが学生の日本語力があまりにも低いことです。携帯電話の普及によって会話のレベルの日本語しか知らないのではないかと感じました。手紙を書くという習慣がなくなったことがその低下の遠因なのかもしれません。しかし、考えてみると、それだけではなく、基本的な読書習慣がないのではないかと思っています。学生らに聞いても年間に読む本の数があまりにも少なすぎます。学生でしたら、最低でも年間数十冊の本は流し読みでも必要です。特に、感受性の高い時期ですので、読んだ本の数だけ確実に成長します。また、若い時期に読まなくてはならない本もたくさんあります。今日では、インターネットが発達していますので、若い時期に読むことを推奨する本は簡単に検索できます。
日本が世界に誇れるのは日本文学であるあるというのは説明するまでもありません。沢山の古典も現代の私たちはそれほど苦労しなくても読むことができます。高校でも古典を読む授業もあるというのは世界的に稀です。それほど日本語には歴史的な切断もなく現代まで続いています。その連続性のために日本独自の文化が形成されている。つまり、日本語を理解することが日本を理解することです。しかし、日本人がまともな日本語も書けないような時代になってきています。皆さんのお祖父さんやお祖母さんに手紙を出したら綺麗な日本語の返事が返ってくるはずです。その日本語と同じレベルの返事を皆さんは書くことができるでしょうか。また、夏目漱石島崎藤村などの本を読んだことがありますか。
理科離れが顕著との話題がありますが、その背景には日本語離れがあるあるとも言われています。言語には論理性がありますので、日本語の理解が不十分だと論理性が身に付きません。そのためには、読書習慣が絶対に必要です。読書には忍耐力が必要ですので、それも身に付きます。読書は人の人生や考え方を疑似体験できるので、とても楽しくなります。読書習慣のない人たちはその楽しみを体験していないと思います。世の中は拝金主義がはびこっています。お金や物だけでは幸せにならないことは言い古されています。人生は楽しく幸福に生きるためにあるのです。その手助けをしてくれるのが読書です。それにより豊かな人間性が育まれます。
なお、年末年始の休暇に入りましたので、ここ一週間で、私は文庫本を三冊読みました。最近は読むだけでなく本を書くことも毎年行っていますので、年間に読む本の数は多くはないのですが、流し読みや摘み読みも含めると百冊近く本を読みます。
追伸
読書の大切さを述べている藤原正彦著「日本人の矜持」(新潮文庫、438円)の一読を推奨します。単行本を新著にしたもので、また、「国家の品格」の本で有名になった藤原先生が九名の著名人との対話集です。彼らは皆、若者の読書離れを危惧しています。特に映画監督の山田太一氏との対話が興味深かい。安価な本ですので、是非一読を。二年前の初版から昨年末で八刷もあり、短期間で多くの人に読まれている。