大阪都構想の本を読んで

年末のマスメディアで、橋下徹大阪市長のニュースを見ないことはない日が続いている。年末年始の休暇に入り本を読む時間がとれるようになったので、彼が掲げている大阪都構想に詳しく知るために、書店で平積みされているその解説書「体制維新・大阪都」(文春新書)を購入した。大阪市長選挙の少し前(10/31)に刊行された本であるので、そのことを少し考慮して読んだ。ほぼ読み終えたところであるが、・・・。
その書評としては、きちんとした行政マネージメントの内容である。弁護士として、社外取締役を経験しているので、組織のマネージメントというのはどういうものかが良く理解している。橋下氏も社外取締役の経験が大阪府の運営に役立ったと文中で述べている。大阪府の運営で、政治と行政との役割分担が実務的で明快であった。過去の三年間の彼の実績を事例にして、その分担をとても分かりやすく解説している。とても論理的な内容(一般の企業では当たり前であるが)で、これまでの大阪府の行政の問題点を明確にして、それを行政マンらと多くの議論を重ねて改善してしてきたことが事例でわかりやすく述べられている。また、努力した行政マンへの感謝も随所に述べらている。
所感としては、大阪府にごく普通のマネージメントがなかったことに驚きを感じた。彼も述べているように、これまでの知事は官僚出身者が大半で、マネージメントの経験がないので仕方がないと述べている。その典型が民主党で、行政マネージメントの素人が政権を取ったので無理であると断言している。その他の多くの大統領と同じように、米国のブッシュ元大統領は、企業経営者でかつ州知事も経験している。したがって、現在のオバマ大統領は、それらの経験がないので、日本の民主党の政権と同じと述べている。それは米国での現在のオバマ氏の評価通りであるが、・・・。
行政と異なり、政治には意思決定のシステムが明確であることが求められる。彼はそれをきちんと把握しており、基本的には議論がまとまらなかったら、民主主義のルールで議員の投票で決めることになる。そのためには権力闘争というべき政党活動が必要になる。そこで大阪維新の会が結成されたと述べている。それは政党であるので理念が必要となる。大阪での大きな問題の根源が大阪市大阪府の二重行政にあること(半世紀前から皆が分かっているが)から大阪都構想を理念とした。将来的には道州制的な地方自治の独立を目指している。
そのために、大阪府大阪市の関係を整理して、1つの行政自治体にする案が大阪都構想である。この二重行政の無駄を具体的な数値で述べているのは弁護士らしく明快である。ここで興味深いのが、大阪府大阪市の関係が、大阪府が政府で大阪市都道府県の関係と相似形であることを指摘している。国民からは、大阪都構想が成功すると、その成功モデルを国のレベルに拡張できると見える。
橋下氏は就任後すぐに東京の挨拶回りをしたが、各政党幹部の手のひら返しの態度に、逆に不信をもったのではないか。彼らは、単に選挙で有利になるためという小手先対応で政治的な理念も金繰り捨てている。このブログを書いてる時に、民主党の若手議員の9名が離党届を出したという速報が入った。彼らも政党交付金目当てとしか思えない。国民が大阪都構想に注目するのは、現在の政党に対する閉塞感からで、その成功を期待していると考えるのは私一人ではないであろう。なお、アマゾンの書評で、29名のカスタマーレビュー(上記もアップした)があるので、本を読む時間のない人にはこれを推奨する。
最後に、この本の出版だけでなく、ホームページやメディアへの登場など、彼の情報公開の姿勢には敬服する。それと比べて、今の野田首相の姿勢は対称的である。説明しないで、政策に対する国民の理解をどのようにして得るのであろうか。