浜田宏一の「インフレターゲット論」の本を読んで

インフレターゲット論の「アベノミックス」の理論的な支援(内閣参与)をしている老経済学者の浜田宏一著「アメリカは日本経済の復活を知っている」を読んだ。
昨年、12月に刊行された本であるが、3月末に購入した時には5版で、かなりの売れ行きである。なお、前白川総裁は著者の下では聡明な学生であり将来を嘱望されていたが日銀での出世の道を進むと共に、世界でも異端というべき日銀理論に染まってしまったという話から始まるのは、書き出しとしては興味深い。
日銀や財務省の内輪の問題で政策が決められているという記載に、官僚の不勉強と彼らの省益第一で国家第一を思う気持ちがなくなってきている現状を強く痛感した。また、日本の記者クラブの問題も指摘している。日本の記者の劣化は周知の話ではあるが、、、、。
内容的には、アマゾンのカスタマーレビュー(識者が多くコメントしているようである)を読んでもらうのがよいが、所感としては、老経済学者の回顧本で、米国で指導を受けたノーベル賞級の経済学者が沢山登場して、読み物としては面白い。また、経済学を理解しない素人の我々にも分かりやすく政策提言や、問題点・課題を提示しているのは好感がもてる。しかし、何度も同じ内容が繰り返し出てくるので、回顧録インフレターゲット論を明確に分けて書いてくれると読みやすかったが、・・・。
本の内容については、経済学の専門家が書いたと思われるアマゾンのレビューを少し引用させてもらうと、・・・、
インフレターゲット論」とは、デフレは、中央銀行が物価上昇目標を掲げて、長期国債等の買上げ等のオペレーションを積極的に行えば、容易に脱却出来るというものだが、これは貨幣数量説に基づくものではない。貨幣供給量を増やせば、物価は上がるという単純な議論ではない。このマネタリストの議論では、インフレは単に貨幣価値の下落をもたらすだけで、実体経済には何の影響も与えない。金融政策で雇用を確保するなど不可能だ。日銀が依拠する議論がむしろこれに近い。
古いケインズ経済学の教科書では、低い市場金利のもとでは、流動性の罠が発生し、金融政策は無効になると書かれている。
しかし、浜田氏の主張は、これらは、一昔前の議論であり、現代マクロ経済学の理論水準から言えば、「低金利のもとでも、金融政策は、円高やデフレに対して、有効であって、日銀は、消極的な金融政策によって、自らの役割を果たしていない」という糾弾に尽きる。欧米の中央銀行並みの積極的な金融緩和を行っておれば、リーマンショック後の日本経済はもっと良好な状態に回復できた。雇用維持も金融政策の役割になり得るというものだ。実際、米国連邦準備理事会FRBの政策目標には、雇用確保が含まれている。