デザインマーケティングの書籍を計画中

デザインとマーケティングとの関係は長い歴史がある。デザインとマーケティングの両方の本に載っているT型フォードとGMの関係である。前者は大量生産することで誰でもが購入可能な価格にした車である。後者は、フォード社に対して開発が遅れたため、異なる戦略をとった。採用したのがデザイン・ラインナップという顧客の所得に応じた異なるタイプの車を提供した。これがマーケティングの始まりと説もある。今日的な説明では、前者は「機能的価値」で後者は「意味的価値」を訴求した車である。
デザインとマーケティングはこのように関係が深いが、マーケティングはリサーチと思っているのか、すこぶるマーケティングに対して否定的なデザイナーが少なくない。そのためか、グーグルやアマゾンで検索しても「デザインマーケティング」の本が殆どない。この要因は、このテーマはデザイナー側しか執筆できないので、文書作成力に弱いデザイナーには荷が重い。基本的には、四半世紀の間、デザインの現場にいて、また、10数年研究生活をしている下名しか執筆できないのではないかと強く感じている。下名は音響映像機器や携帯電話の開発で、デザインとマーケティングの現場を10年以上体験している。
他方、広島市産業振興センターの依頼で今年の2月から今月まで12回のデザインマネジメントのセミナーの企画を担当して、講師の先生方や現場の最先端の活動をしているデザイナーの方々の話を聞いて、デザインの現場が大きなターニングポイントに入っていると思った。もちろん、前からその内容はある程度理解していたが、今回、その変化を多くのデザイナーやマーケッターに紹介する必要性を感じた。
その変化とは、デザイン思考や経験価値(コトラーマーケティング3.0)、オープンイノベーションなどのビジネスモデル環境の激変、、ネットでフラット化する社会、Web3.0などデジタルマーケティング、感性マーケティング、インタフェースデザイン、などの商品開発・サービスに関する同時進行するものが一つの塊としてひとつの方向に向かっていると感じられる。
それらの流れをわかりやすく説明するには、過去と現在、未来のデザインを理論体系がきちんとしているマーケティングという視点から解説するのが適しているのではないかと判断した。本来は、デザインマネジメントとで執筆するのがいいのだが、新しい分野のため理論のベースが弱いので、マーケティングの方が適している。
そこで、理論的なベースにするのが、マーケティングの永遠のバイブルと言われている「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版、2014/4/19」しかない。初版は数十年前になるが、各時代に合わせて、改定を何度も繰り返している約1000ページの厚い本である。本書をきちんと読み切っていないが、価値の定義が「機能的価値」中心で「意味的価値」が極めて貧弱である。そのために、「コトラーマーケティング3.0、(2010)」の本が出版されたのだが。また、最後の方の章にある新製品開発でも、デザイナーでないコトラーでは限界があると思うが、他の章と比較して甚だ貧弱である。もちろん、デザイン思考やデジタルマーケティングなどには言及していない。さらに激変するビジネスモデル環境に対応する内容も述べられていない。しかしながら、マーケティングに関しては全般的で理論的でとても参考になる。