無自覚過程とデザイン

新年明けましておめでとうございます。さて、年末年始にお餅を食べながら「無自覚過程」(無意識よりも広い用語)の本で有名な下條信輔著「サブリミナル・マインド」(中公新書、1996)を読みました。実験心理学者の視点からの実証的内容で、無自覚過程を比較的平易に解説しています。出版時の影響または出版社の営業的配慮からか、「サブリミナル」(閾下)の用語がタイトルになっていますが、内容的にはそれについては一部で、無自覚過程について詳しく説明しています。東大の講義録をもとにしているので広範囲の内容です。私はデザイナーという立場から、デザインの評価は瞬間的に判断される傾向にあるので、それは無自覚過程ではないかと思っていました。紙面の都合でその内容は書くことはできませんが、私たちの行動や判断に無自覚過程が大きな影響を与えていることを実感しました。特にデザインに関して「知覚や認知はその結果を自覚的に体験できるが、過程は自覚できない」が印象的でした。盲視覚の患者の事例では「欠損領域は意識的には見えていないものの、意識以外の領域では見えている可能性がある」との実験結果は印象的でした。例は良くないのですが、「涙が出るから悲しい」というように、無自覚過程の生理的な過程が先行して、自覚過程の感情が起こるという実験結果(情動二要因論)も、「デザインが良いという感性的な判断の無自覚過程は何か」と興味をそそられました。それでは本年も宜しくお願いします。