さらに節電で思うこと

かつて、私は電機メーカに勤めていたから理解しているのだが、電力の最大の課題は、昼間と夜の電力格差の平準化である。電力会社は、夏場の瞬間的な最大電源消費値を高くして、大停電が起きないように備える莫大な投資を行なっている。そのための知恵として、昔からあるのが揚水発電がある。揚水発電は、夜間の余剰電力を利用して下貯水池から上貯水池にポンプで水を汲み上げ、日中の電力消費の多い時間帯に水力発電をする仕組みである。週刊ポスト2011年4月29日号によると、東電は1050万kW(何故か極秘)の揚水発電施設を持っている。民間では、深夜電力の有効利用のひとつとして深夜温水給湯器があるしかし、最も理想的なのは、電力を貯められること。それは技術的には膨大な蓄電池開発が必要であったが、電力供給とは違うところから、つまり、電気自動車の登場である。それが副産物として解決できるのではないかと考えたのがITを用いたスマートグリッド構想である。電気自動車が普及したら、いたるところに蓄電池がある世界が登場。つまり、待望の分散型の電力システムができる。集中から分散は技術の必然の方向である。この分散型は、電力の2番目の課題である送電の約3割の壮大な無駄を、それもかなり解消できるという一石二鳥の構想である。ドラッカー先生が未来のキーワードとして「多様性」を提示しているが、多様な方法で電力を生産すべきである。ガス会社と電力会社は犬猿の仲であるのはご存知の通りである。今回の震災で、最近、導入しやすくなった天然ガスを用いた家庭用コージェネレーションシステム発電の普及は進むであろう。石油価格の高騰に対して天然ガスは長期に安定している。このシステムは家庭で発電するので分散型である。。(参考・5回シリーズ http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=43937)

スマートグリッド構想では送電事業の自由化が必須である。これは10年以上も前から論議になっているが、政財界を挙げて潰しにかかっている。現在の独占的な電力会社は集中型でないと甘みがない。昔から電力会社の役員は経団連の重要な役員を占めている。政治献金や集票力も絶大である。彼らは簡単に分散型の電力システムを許すわけはなく、彼らにとって都合の良い分散型になる。それは、スマートグリッド構想の世界標準のものではなく、間違いなく効率の悪い日本型のシステムになる恐れがある。太陽電池パネルでの失敗の再現である。グローバル化時代は、世界標準になることが技術的な有意を持てる。だが、彼らにはそのようなことよりも、身の保身と天下り先の確保の方が最重要課題であろうか、・・。