商品企画は引き算、そして、iPad

日経のWeb刊に載っていた『ジョブズ氏が言う「つまらないものは捨てろ」の意味』(2011/5/26)の記事を読んでいて、特に、『製品デザイン、事業戦略、そしてもちろんコミュニケーションとプレゼンテーションにおいては、何かを削ることによって価値が高まることが多い。2008年10月、アップルはノートパソコン「MacBook(マックブック)」の新型機を発表した。デザイン部門の重鎮ジョナサン・アイブ氏は聴衆に、「アルミ板から削り出したユニボディー構造の筐体(きょうたい)」から、コンピューターの主要な構成部品の60%を取り去った、と語った。部品数を減らしたことで、当然コンピューターは薄くなった。そして意外にも強度や耐久性も高まった』で企業時代の出来事を思い出した。
商品企画会議で、企画課長が「商品企画は引き算である」と述べたことが印象的であった。彼の体験と研究会で、パイオニアの企マンも同じ意見であることを説明した。その典型的な事例として、有名なソニーウォークマンを挙げた。当時、録音機能のないテープレコーダは、「レコーダ」という名称からありえないことであった。しかし、録音機能を撮ることにより小型になり、携帯音楽プレーヤという新しいジャンルの製品群を創出した。アップルのジョブズ氏は薄いMacBookから、さらに引き算したiPadという製品群を創出することになる。古今東西、この考え方は商品企画の鉄則のようである。
この話で付け加えると、下降線をたどっている部門の商品企画の場合、内部の言い訳のために足し算の商品企画になる。色々な視点の言い訳になるのだが、価格は高価になり、魅力を感じられない贅肉だらけの製品が生まれる。私の経験から、引き算ができる商品企画は、勢いのある部門の製品であった。簡単なようで難しいのが引き算の商品企画である。最後に、上記の記事の引用で『「誰もがアップルのようにイノベーションを生み出せるのだろうか」という質問をよく受けるようになった。答えは簡単だ――アップルのイノベーションを支える基本原則は誰でも学ぶことができるが、それを行動に移す勇気を持ち合わせた企業は少ない』を追記する。