原島博先生の「科学技術は文化をめざす」を聴講して

10月19日(土)に多摩美術大学の八王子キャンパスで開催の日本デザイン学会秋季企画大会に参加した。午前に五十嵐威暢学長の基調講演(写真2)と原島博東大名誉教授の招待講演がありました。
顔学で有名な原島先生の講演内容はとても興味深かったので、少しその詳細を本ブログに書きます。聴衆の皆さんからも称賛のコメントがありました。
工学はもともと芸術と関係が深いのにもかかわらず、インフラや産業振興を目指してしまい、工学の持つ文化創造学という視点に立ち返るべきと指摘された。従来、工学は工業生産学で、人々の生活を豊かにすることを目的としてこなかった。デザインの方も産業のためのデザインで、生活創造者のためのデザインを指向してこなかった(生活者のためのデザインは指向していたが、創造者の視点は新しい、井上)。
原島先生は定義の難しい「文化」を次のように定義した。「心の豊かさをもたらす人および社会の活動」→「人が生活の中で展開している創造的な試み・・・工学は、人のそれぞれの創造的な営みを支える科学技術」→「未来につなげたい人および社会の活動」
ドイツのバウハウスでは工業と芸術の融合がインダストリアルデザインとして誕生したが、「人」の視点が希薄であった。これまで、工学やデザインでも、「人」を消費者や人材という枠組みであったが、本来は、創造的生活者ではなかったか。
なお、工学の人々ももっとデザインや芸術に近づく必要がある。その中で、メディアアートの世界は、日本では工学者の割合がとても高い。欧米ではその逆であるという。つまり、工学とデザインが遠い関係から、今後は近い関係にならなくてはならない。(両社は、「恋人モデル」つまり「向かい合うのでなく、横に座り、同じ景色を見る」になる必要がある。)
そのためには、創造的生活者という視点から、技術は「Life oriented Technology」と「Culture oriented Technology」でなくてはならない。
創造的生活者は自身が発信できるパーソナルファブリケーションになる必要がある。その例は、料理である。現在は廃れているが衣服も裁縫で自作した時代があった。3D-Peinterも加速するであろう。さらに、ソーシャルファブリケーションとして、地域からの発信もある。ソーシャルネットなどがそれを支えている技術であろう。
一方、研究の方法も変わるであろうと、つまり、「ヘッド型研究」→「ロングテール型研究」、例として、国民全員科学者にするニコニコ学会がある。
従来の研究は、「研究→学会」⇒深い谷⇒「産業→社会」の分散モデルであった。これからは、「リニア型研究」または「オープンパラレル型研究」と呼ばれるものになるであろう。例はよくないが、軍事研究は、「社会」(最前線)からの要望が、産業や学会、研究へと伝わり研究が展開されるモデルと説明された。また、情報分野では、研究の段階で、そのプロトタイプを、まずは社会に見せて、社会からの要請が伝わって行くとモデルである。
以上、講演メモをもとに箇条書き的に書き下ろしたが、下記の野口先生のブログが、とてもきちんと書かれているので、それも参照して頂くと全体が理解できるのではないだろうか。

●野口先生のブログ⇒http://pga00374.cocolog-nifty.com/blog/2013/week43/index.html