取扱説明書のないMac製品

かつて、携帯音楽プレーヤの初期のiPodを購入したとき、取り説のないことに驚いた。さらに電源ボタンもなかった。日本企業で製品開発を担当してきた者としては、それらが信じられなかった。顧客満足の考え方が徹底している日本製品ではありえないことである。したがって、初心者には操作性という視点では優しくなかったのである。しかし、見た感じはシンプルで、とても使い易そうという印象であった。学生を被験者にその評価実験を行っても、視覚的な使いやすさ感は第1位であった。その操作の考え方も、所謂、ショートカット的な操作が多く、初めは試行錯誤するが、一度覚えてしまえば、逆に使いやすい。これはラスムッセンの行為の3段階モデルと符合する。専門の感性研究の視点からは、携帯音楽プレーヤの操作の考え方自体は、ウォークマンなどの多くの製品で理解していることや、多機能な製品でもないので、適当に使っているうちに操作は理解できる。逆に、操作法を楽しく理解するという喜びを与えているのではないかと考える次第である。最近は、自動ボタンですべてを済ましてしまう傾向が蔓延していて、使う楽しさが忘れられている。その背景を後日考察する。