ソニー凋落の理由

今月の初めに、ハワード・ストリンガー会長兼CEO(最高経営責任者)による、次期社長兼CEOになる平井一夫副社長(51)の紹介の記者会見があった。ストリンガーがソニーの凋落を促したことは周知の事実であるが、やっと、交代となって喜んだ日本人が多かったと思う。米国人のジョブス(アップル)がハードとソフトの垂直統合を推進して大成功したのに対して、ソニーは、ハードを捨て去り(技術者の大量解雇)、ネットワークとソフトに絞り、それを推進して大失敗をした。同じ米国人でもこんなにも違うのかと、・・・、一方、ジョブスは古きよき時代のソニーからよい点をたくさん学び、それを正当に継承し行って、現在の大成功に至った。
大賀社長も大反省したのが、出井社長へのバトンタッチであった。技術の分からない出井社長の時代から、現在のソニーの凋落が始まったと言われている。今度の平井氏は、技術の分からないゲームというコンテンツ出身である。三代続けて、技術の分からない社長が選ばれた(正確には、大賀社長から)。かつてのソニーでは、技術の井深、営業の森田というように、技術と営業が交互に社長になる慣習があった。しかし、大賀から出井で、その流れが終わり、凋落が始まった。
このことにとても詳しいのが、昨日、読み終えた立石泰則著「さよなら!僕らのソニー (文春新書、2011.11) 」である。アマゾンの27レビューから、一部抜粋すると、「ソニーの創業時からストリンガー体制の没落期までのソニーの歴史をまとめた本である。」「井深、盛田両氏が牽引した"技術のソニー"の経営の実権が大賀氏、さらに出井氏、ついにはストリンガー氏と変転していくなか、ソニーの企業体としての性格は大きく変わっていった。ことに、本流だったはずのエレクトロニクス事業が"ハードとソフトの融合"などの"お題目"によって名実共にないがしろにされ始め、ヒット商品が少なくなり、やがて人材の流出を招くに至る、という低落・委縮・弱体化傾向は21世紀に入って以降も続いているという。」などである。なお、著者がソニーの社長や役員に対して行ったインタービューに基づいているため内容的には比較的信用できる。
ジョブスの自伝を読んだ後の爽快感に対して、この本での所感は全く反対であった。ソニーは完全なアメリカの会社になって、アップルが日本の伝統を継承している会社になったという感じが強くする。この本を読んで最も憂鬱になったのが、ソニーから大量解雇された技術者が韓国や台湾に引き抜かれ、その結果、サムソンのテレビの絵作りが、ソニーそっくりになったということや、台湾のOEMメーカが、彼らの力で、iPhone/iPadを製造しているという現実である。大変なる頭脳流出である。