前刀禎明著「アップルは終わったのか?」を立ち読みして

時々メディアでも登場する前刀氏であるが、元気がなくなってきたアップルとソニーの復活に向けての応援歌的な本である。両社に勤めていた前刀氏であるので、自己の経験から話しているので素直に説得力を感じられる。また、前刀氏の生き方も、今日の若い人たちには参考になると思えた。2017年5月刊行
その中で、下記のソニーの『開発18か条』が引用されているが、この両者が、現在、忘れている信条ではないかと彼は指摘している。
個人的には、データには2種類あるという話が興味深かった。現在の会社が開発したスマホのアプリをマックとアンドロイドのどちらで発売するかと討議した時、市場調査でアンドロイドの方が市場シェアが高いので、このOSで発売すべきと、社長の前刀氏に提案があった。しかし、彼の通勤電車やその他の施設での観察的な体験(のデータ)では、アプリをよく使用しているのはiPhoneユーザーの方が顕著に多いとのことで、逆の決定になった。
つまり、単純にデータの数値だけで判断するのではなく、現場感覚も加味して判断する必要がある。これは、感性の研究でも、以前から言われている考え方と一致する。なお、下記のソニーの『開発18か条』で、第17条がこれに少し関係していると思う。
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<内容紹介> ビジネス成功のヒントがここにあった! 時代の最先端を走り続け、世界を驚かせてきたApple。かつて、ウォークマンで世界を制していたSONYに勤務し、Appleでは、S.ジョブズの下、マーケティング担当副社長を務めた著者が、iPhone発売開始10周年を機にAppleを検証・分析し、これからを提言!

【目次】
第1章 僕がアップルに入った理由
第2章 アップル製品の隆盛
第3章 スティーブのアップル
第4章 イノベーションを起こすために
第5章 アップルのこれから  
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ソニーの『開発18か条』

第1条:客の欲しがっているものではなく客のためになるものをつくれ
第2条:客の目線ではなく自分の目線でモノをつくれ
第3条:サイズやコストは可能性で決めるな。必要性・必然性で決めろ
第4条:市場は成熟しているかもしれないが商品は成熟などしていない
第5条:できない理由はできることの証拠だ。できない理由を解決すればよい
第6条:よいものを安く、より新しいものを早く
第7条:商品の弱点を解決すると新しい市場が生まれ、利点を改良すると今ある市場が広がる
第8条:絞った知恵の量だけ付加価値が得られる
第9条:企画の知恵に勝るコストダウンはない
第10条:後発での失敗は再起不能と思え

第11条:ものが売れないのは高いか悪いのかのどちらかだ
第12条:新しい種(商品)は育つ畑に蒔け
第13条:他社の動きを気にし始めるのは負けの始まりだ
第14条:可能と困難は可能のうち
第15条:無謀はいけないが多少の無理はさせろ、無理を通せば、発想が変わる
第16条:新しい技術は、必ず次の技術によって置き換わる宿命を持っている。それをまた自分の手でやってこそ技術屋冥利に尽きる。自分がやらなければ他社がやるだけのこと。商品のコストもまったく同じ
第17条:市場は調査するものではなく創造するものだ。世界初の商品を出すのに、調査のしようがないし、調査してもあてにならない・・★
第18条:不幸にして意気地のない上司についたときは新しいアイデアは上司に黙って、まず、ものをつくれ
⇒これは、ウォークマンの開発に携わった大曽根さんという方のチームで唱えられていたものだそうです(出井さんCEO就任前に)。