「震災にデザインがどのように貢献できるか?」を聴講して

東大の本郷キャンパスで、11月12日に開催された日本デザイン学会主催の秋季企画大会・パネルディスカッション「デザインに何ができるか」に参加した(下記に大会会場で記念撮影)。大会趣旨を引用すると、「本年3月11日に発生した東日本大震災は、津波放射能などの新たな問題によって、科学技術やデザインの各領域に、人々の生活や社会における安全・安心、信頼を取り戻すためのパラダイムシフトの必要性を突きつけています。デザインの各領域が過去の震災から何を学んだか、今回の震災に対して何をなすべきか、何ができるのか、これからを見据えて取り組むべき課題は何かを、基調講演、震災プロポジション、パネルディスカッションなどを通じて議論していくことを目的としています。」である。
所感としては、原田昇教授(東大大学院 都市工学専攻)の基調講演「震災後の工学は何をめざすのか」が興味深かった。その詳細は下記の東大の先生方がまとめた「緊急工学ビジョン」の報告書に譲るが、彼らの危機意識が理解できた。また、これから日本の工学がエネルギー問題や災害工学に対する将来ビジョンが分かった(一読を推奨)。少しうがった見方をすると、大学人としては、来年以降に申請する科研費の主要テーマを示唆しているといえよう。デザインが震災に貢献することの難しさからか、午後からのパネルディスカッションは少し消化不足であった。
なお、久しぶりに、昼食時に本郷キャンパスを散策したが、土曜日ということからか、東京の公園または観光地という印象であった。地域の人たちが散歩していたり、乳母車をひいている若い夫婦に出会い、修学旅行の高校生らの集団に道をふさがれ、加賀藩の名残である赤門の前で記念撮影する人たち、三四郎池ではスケッチを描く老人に雑談した。北側の東大病院の横の庶民的な食堂で、白衣を着た若い医師たちとテーブルを接して定食を食べると下町の匂いも感じた穏やかな週末であった。その秋季企画大会を午後4時に後にして、渋谷のデザイン事務所に共同研究(ヒューマンインタフェースのメトリックスに関して、下記のサイト参照)の打ち合わせに向かった。彼らの提案する操作性能測定(NEM:Novice Expert ratio Method)についても論議した。私たちの提案する操作履歴を解析する階層化グラフ分析手法とも関連していた。詳しくは、別の機会にお話しする。
■緊急工学ビジョン・ワーキンググループの「震災後の工学は何をめざすのか」: http://www.t.u-tokyo.ac.jp/tpage/topics/2011/051001.html、■操作性能測定:http://usability.ueyesdesign.co.jp/about_open_03.html