iPhoneとiPadのどちらが先の企画か?

ジョブズの本の後編を読み終わりつつあるが、iPhoneよりiPadの企画の方が先であったことがわかった。発売は、iPadが後であったので、iPhoneを大きくしただけの製品という酷評もあったほどである。本によると、iPadの企画の始まりは、ビル・ゲイツがネットパソコンとして、タッチペンタイプのスレートPCのコンセプトを提案したのを受けて、アップルとしてもネットパソコンを提案する必要を感じてことから始まった。ただ、ジョブズは、タッチペンタイプはユーザー体験としては良いとは思えないと直感して、指で操作するアイデアを思いついたようである。つまり、マルチタスクのインタフェースである。ただ、それを実現する技術がアップルにないので、ベンチャーで、その技術を持っている会社があることが分かり、その会社を買収して、メンバー全員をアップルの社員にした。iPadを秘密裏に開発している間、従来のパソコンを小さくしたネットパソコンは、市場を席巻することはなく、iPadの登場で、その存在感はなくなりつつある。
一方、アップルは、iTuneと連携したiPodが大成功になり、その編集機能をパソコンに依存したことから、iPodが売れるとアップルのパソコンも売れるという相乗効果が生まれた。しかし、このアップルの再生となったiPodも、世界的に携帯電話が高度化して、デジタルカメラも飲み込むようになると、次は、iPodも携帯電話の餌食になるとジョブスは直感した。どうせ食われるのなら、iPodから携帯電話を取り込めばよいとのアイデアから、開発中のiPadのメンバーから、iPodを展開したiPhoneの開発チームを編成した。携帯電話の展開が迅速なので、iPhoneの開発を急いだと本で書かれている。そして、2008年にiPhoneが発売され、2010年にiPadが発売されるという経緯となった。
ジョブスはiPodを発表したとき、「デジタルハブ(Digital hub)」というコンセプトを示し、その後のアップルの「Think different」と並ぶコンセプトになった。パソコン(PCからiPadへ)が中心のハブとなり製品開発を展開するのであるが、2011年に、そのハブにインターネットを置き、ユーザーの利便性がより高くなる「iClud」(最後の故ジョブスによる公式発表)というコンセプトに発展する。
追伸//
「iClud」は、アップルのようなハードとソフトを持っているメーカーが、その効果を最大限に発揮できると本で述べられている。実際には、マイクロソフトもグーグルも、アマゾンも成功していない。情報化社会の複雑系経済学では、トップの企業に「ロックイン」されると、その二番手以降の企業は敗退すると言われている。「iClud」で、数日前、ドコモも来年にはiPhoneに参入するという噂が流れたが、この進展で現実化しそうである。ソフト中心と思えたクラウド時代に、最も弱点があるといわれたアップルが主権を握るとは時代の皮肉である。